たった一つの動画で人生が崩壊した男

これは2002年のこと。演技力に優れたドイツ人の少年、レオポルド・ノーマンド(14歳)が、インターネットに動画を投稿した。

その動画で彼は、ゲームの読み込みが遅すぎて怒りの感情がコントロールできなくなり、ヒステリックに叫びながらキーボードを叩きつける少年を演じた。

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【実際の動画:キーボードクラッシャー(和訳)】

この動画が投稿された後、何があったかは多くの人が知っている。

そう、彼は世界中でネット上の有名人になった。

もちろん、動画はすべて演技だった。彼自身は普通の少年であり、頭のおかしな精神病患者ではない。

そもそもこの動画は、ゲームプレイ中に感情が抑えられなくなるプレイヤーへの風刺として作っていた。

【キーボードクラッシャー動画。空耳ver】

彼は、世界中のネット民に無数の笑いをもたらした。

だがこの動画が原因で、彼が10年以上もの間、苦しめられていたことを知っているだろうか?

その年にこの動画が流行してから、ドイツ人の少年は自分の人生が完全に変わってしまったことを悟った。

周りの同級生が、彼が有名な動画の少年だと気づく人が増えてきた。それに気づいた人たちは、スマホを取り出して勝手に彼の写真を撮り出した。

彼は、勝手に自分を撮った他人のスマホを壊したことがある。 写真を撮られるのが嫌だったからだ。

毎日、あまりにも注目を浴びていた。

周りの人は、彼のことを真似て面白がっていた。一度気づかれると、檻の中の珍しい猿を見ているかのように、人が寄ってきた。

このような状況は毎日続き、彼は大きな社会的圧力に耐えていた。

そして投稿から1年が経ち、彼は15歳になった。

彼はうんざりしていて、もうこりごりだった。だから、自分のことが誰も分からないように髪を染めて、コンタクトレンズを着けた。

ただそれだけでは、彼にとって十分ではなかった。

彼は17歳になると、黒のジャケットにアーミーブーツを履いて黒髪に染め、獰猛な目つきで悪そうな格好をした。背がとても高いこともあって、遠くから見れば凶暴なストリート・ギャングのようだった。

怖い格好をしていれば、誰かが悪口を言ってくることは無いだろうと思っていた。

しかし…彼の痛みはまだ終わっていなかった。
修学旅行中に泥酔して、酔っぱらった後、長年溜め込んでいた不満をついに噴出させてしまったのだ。

彼は酔った勢いで「AK(ライフル銃)を取り出して、自分を笑ったヤツを皆殺しにしたい!」としゃべった。そして、彼はこの発言に信憑性を持たせるため、AKの写真を検索してクラスメイトに見せた。

「見ろ、うちの家にこれがあるんだ」

彼の酔っぱらった冗談は同級生に録音されていた。この録音は学校の教員に渡り、彼が本当のテロリストになると憂慮した教師は、警察を呼んで事態を悪化させた。

彼は退学になっただけでなく、一ヶ月間刑務所に収監された。

出所後、就職活動を始めたが、あの動画の人物だと気づかれることが少なくなかった。

仕事で面接を受けた時、面接官にまでこう言われた。

「私達の従業員はあなたを恐れている。動画のように キーボードを壊されるのじゃないかって」と。

丸2年間、彼は仕事を見つけることができなかった。それは彼の人生の中で最も暗い時期だった。

ついにスーパーで商品を詰める仕事を見つけた。
だが月給は..たったの1万8千円。

彼は何か悪いことをしたのか?

喧嘩、傷害、強盗、窃盗?

いや、何もしてない。

風刺動画をアップしただけで、多くの人に拒絶された。

彼は完全に心を閉ざし、テレビを見ず、1日12時間寝て、過食し、同時に筋トレにエネルギーを発散していた。そこで彼は筋トレにやりがいを感じて、自らを鍛え、強い男に成長した。

逆境に長くとどまっていたせいか、彼の人生の状況は急に好転した。

まず、就職活動に成功し、経済状況が大幅に改善された。そして毎週のようにパーティーをする仲間ができ、恋人を作ることができた。

Youtubeで自身のラップチャンネル(リンク)を立ち上げた。外見は激変したが、彼のチャンネルには動画の少年であることを気づく視聴者が増えてきた。彼は逃げることなく、勇気を持って自分の正体を認めた。

10年以上経ってようやく、彼は普通の生活を取り戻し、順風満帆の日々を送れるようになったのである。

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物語

Posted by uti