最年少で死刑判決を受けたジョージ・スティニー
(via wikimedia)
スポンサーリンク
ジョージ・スティニーは、7歳と11歳の白人少女2人を殺害した罪で、1944年6月に電気椅子による処刑を受けた。その当時、ジョージはまだ14歳であった。現在においても、彼はアメリカで死刑執行された最年少の人物である。
ジョージの一家は、サウスカロライナ州のアルコルという小さな町に暮らしていた。その町には白人も黒人も住んでいたが、線路でそれぞれの居住空間が隔てられていたため、黒人と白人の間で交流は限られていた。
1944年、ベティ・ビニッカー（11歳）とマリー・エマ（7歳）の遺体が、黒人側の居住区域にある排水溝の中に見つかった。遺体には鈍器のような物で殴られた痕が残っていた。
(via feednews)
捜査
ジョージ・スティニーと兄のジョニーが、少女殺害の疑いで逮捕された。ジョニーは警察によって解放されたが、ジョージは拘束され、彼は裁判と有罪判決の後まで両親に会うことを許されなかった。
手書きの供述書によると、逮捕したのはクラレンドン郡の副官H.S.ニューマンで、「私はジョージ・スティニーという少年を逮捕した。ジョージは自供をして、凶器となった約40cmの鉄の破片がどこにあるか教えてくれた。ジョージはその凶器を、少女たちが乗っていた自転車から約20m離れた排水溝に放置したと言った」と話した。
しかし、ジョージが署名した自白調書は存在しなかった。H.S.ニューマンの証言に対して14歳のジョージは、逮捕した警官が自分を飢えさせ、自白を強要したと主張した。
裁判
陪審員の選考を含めて、ジョージに対する訴訟手続きは全て1日で終了した。ジョージの国選弁護人に選ばれたチャールズ・プラウデンは、ジョージの自白について証言した警察官3人に対して、異議を唱えなかった。これが唯一の証拠であったにも関わらずだ。
そして検察官が提示した自白の証言は、明らかに矛盾だらけだったのに、国選弁護人はこれにも異議を唱えなかった。
ジョージの裁判では、当時としては典型的だったが、陪審員がすべて白人から選ばれた。ほとんどの黒人はまだ選挙権を剥奪され、投票を禁じられていたため、彼らを陪審員に選ぶことはできなかった。千人以上の白人が法廷を埋め尽くしたが、黒人は誰も入ることを許可されなかった。
陪審員は10分以内に審議を終わらせ、すぐさま有罪の評決を出した。フィリップ・ストール判事は ジョージに電気椅子による死刑宣告をした。ジョージの国選弁護人は、上訴しなかった。
処刑
(via heyfreesamples)
身長154cm、体重40kgほどのジョージ・スティニーは、1944年6月16日午後7時30分にサウスカロライナ州コロンビアの中央矯正施設で処刑された。
ジョージには電気椅子が大きすぎたため、高さを合わせるため聖書でかさ増しされた。死刑執行人はジョージの顔の上にフェイスマスクを被せたが、彼の顔には合わなかった。
死に至る電圧が加えられると、ジョージの顔を覆っていたマスクがはがれ落ち、その顔には涙が流れ落ちていた。
ジョージはその後、サウスカロライナ州・サムターにある無名の墓に埋葬された。
事件の再捜査と有罪判決の取り消し
ジョージが亡くなってから60年後、ジョージと同じくアルコルで育った郷土史家のフリーソンは、新聞記事を読んで事件について調べ始めた。
フリーソンの活動は、サウスカロライナ州の弁護士らの注目を集めた。数え切れないほどの時間をかけて史料の調査と見直しを行った結果、彼らはジョージの容疑を晴らすのに役立つ目撃者や証拠を見つけ出した。
フリーソンは「犯人として名前が挙がっている人物がいましたが、今は亡くなっています。遺族から死に際の告白があったと聞きました」とメディアの取材に答えている。
またフリーソンによると、その犯人は著名な白人一家の出身であり、その家族のメンバーが、最初の検視委員会の陪審員を務めていて、ジョージを起訴するよう勧告していたという。
2014年1月に行われた公判では、殺害のあった時刻にジョージは兄弟たちと一緒にいたという証言がなされた。また少女たちを発見し、水が溜まった排水溝から引き上げたフランシス・バトソン牧師の宣誓供述書も紹介された。
牧師の供述では、排水溝の中や周辺にはあまり血痕がなかったと回想しており、少女たちが他の場所で殺されて、そこに運ばれた可能性が示唆された。
さらにジョージと一緒に刑務所に入っていたウィルフォード・ハンターは、ジョージは常に自らの無実を訴え、「自白させられた」と話していたことを証言した。
これらの新証拠に基づき、2014年12月17日、巡回裁判所のカルメン・ミューレン判事はジョージの有罪判決を取り消した。