失敗した不老不死の薬と技術(賢者の石ほか)
飲めば不老不死になれると伝えられる薬は、古代から様々な研究がされている。そのなかの一部の薬や技術について、失敗したものをご紹介していこう。全6件
1.モルモットと犬のこう丸をつぶして作る不老不死の薬
(via Wikimedia )
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1850年代に活躍した学者のチャールズ-エドワード・ブラウン-セガールは、モルモットと犬の睾丸成分を抽出して若返りの薬を発明した。
彼はこの薬を自分の体に繰り返し注射したことで、より強く、エネルギッシュになり、勢いよく小便が出るようになったと報告している。また大便がするっと出てくる効果もあったという。
(via wikipedia)
彼は自らの実体験からこの薬を「不老不死の薬」として市場に発表した。アメリカのプロ野球選手であるパッド・ガルヴィンも、これを愛用していたことが知られている。
(via wikipedia)
しかしこの薬の効果は単なる思い込みであった。開発した本人は、年齢にしては若々しく見えたものの76歳で亡くなり、パッド・ガルヴィンは46歳で早死にした。また少なくとも1人が、この薬が原因で亡くなっている。
2.金を飲む(金のエリクサー)
(via pxhere)
16世紀のフランスでは、金を飲めば永遠の美しさが手に入れられるとして、金のエリクサーと呼ばれる調合薬を、貴族たちが好んで飲用していた。
愛飲者としてよく知られているのが、フランス王・アンリ2世の愛人だったディアーヌ・ド・ポワチエである。
(via wikipedia)
彼女は信じられないほど若々しい絶世の美女として有名であり、66歳の彼女と出会った歴史家ブラントームは、「たとえこの淑女が何百年生きたとしても、彼女は年を取らないだろう」と言うほどだった。
彼女は若さの維持のため、この薬を日常的に飲んでいたが、その習慣は彼女をゆっくりと殺していった。彼女は66歳で亡くなり、後に行われた遺体の分析で、金中毒になっていたことが明らかになっている。
3.若者の血液を体の中に取り入れる
(via tOrange)
ロシアの革命家であり内科医でもあったアレクサンドル・ボグダーノフは、永遠の若さや若返りを成就させるため、自らを実験台に若者の血液を輸血した。
(via wikipedia)
アレクサンドルは11回の輸血の末、視力の回復や禿げの進行抑制など健康状態が良好になったことを認めた。また彼の仲間であったレオニードは、この実験によって彼が7歳、いや10歳も若返ったように見えると報告した。
アレクサンドルは若者からの輸血によって若返ったとされたが、それが原因で本来の寿命を縮めることになった。
彼はマラリアと肺結核に感染した学生達から輸血を受け、それらの病気に感染したのである。若者たちはその病気から回復したが、アレクサンドルは54歳で亡くなった。
若者からの輸血による若返り効果は、現在のところ科学的な根拠が存在しない。
その若返り効果が最初に報告されたのは、2匹の若いネズミと年老いたネズミを研究対象にしたものだった。この実験では、それらの二匹の体を結合し血液を共有させて行ったため、本当に輸血だけが原因であったとは断定できていない。
また別のネズミの輸血実験では、”輸血による利益は何も無い”と前述の研究結果を否定している。それどころか、これらの実験中に多くのネズミが謎の急死を遂げたという。
もちろん、人については言うまでもない。アメリカの食品医薬局では、高額の治療費を払って臨床的有用性のない輸血を受けることに警告を出している。むしろ必要のない輸血によって重篤な病気にかかる可能性もあると言う。
4.中国の皇帝たちが愛した不老不死の薬、仙丹
(via wikipedia)
古代の中国皇帝らが追い求めた永遠の命を得る薬「仙丹」で、まさか彼らが命を落とすことになるとは思いもしなかっただろう。仙丹の原料は、毒性のある硫化水銀(辰砂)であったのだ。
(via Wikimedia)
辰砂が仙丹の原料とされたのは、その色が血液をイメージさせる鮮やかな赤褐色であったからだ。また辰砂は加熱すると水銀ができ、その水銀に硫黄を反応させると再び辰砂に戻ったように見えた。それが永遠と繰り返せたので、不老不死に結び付いたとされる。
(via wikipedia)
どちらにせよ、辰砂が不老不死の薬になると考えられたのは、単なる連想にすぎなかった。実際のところ、仙丹には水銀が含まれていたので、長寿の薬とは正反対の毒薬であった。
(via wikipedia)
これを不老不死の薬だと誤解して飲んでいた秦の始皇帝は、49歳という若さで亡くなった。彼だけでなく、少なくとも6人の唐の皇帝が水銀中毒により死亡したことが中国の歴史書に記されている。
5.賢者の石
(via Fandom)
中国の錬丹術師が求めた不老不死の薬が「仙丹」ならば、中世ヨーロッパの錬金術師が求めた不老不死の薬は「賢者の石」だった。また賢者の石は、普通の金属を「金」に変えられる触媒であるとも解釈されていた。
(via wikipedia)
中国とヨーロッパで探求の場所・時代が異なっていても、残念ながら注目する物質は同じだった。ヨーロッパの錬金術師も、水銀に関心を寄せ、水銀を原料に何らかの反応を繰り返すことで賢者の石ができると考えていたのである。
賢者の石の創造は、水銀を多量に取り扱うため、錬金術師の多くに健康被害が生じていたとされる。たとえば微積分法を発見し、運動の基本法則を構築した科学者アイザック・ニュートンもその一人だった。
(via wikipedia)
ニュートンは、賢者の石の創造に深く興味を抱いており、造幣局長官の地位に隠れて錬金術の研究を行っていた。そのため晩年は震えや妄想、精神錯乱、重度の睡眠障害など水銀中毒の症状に悩まされていた。
6.人体冷凍保存
(via Wikimedia )
残念ながら、現在のところ不老不死を実現する方法は存在しない。それなら、不老不死が現実となって蘇生する技術が完成するまで長い眠りにつこうとするのが、この技術だ。
既に世界には4つの人体冷凍保存施設が存在しており、アメリカに3つ、ロシアに1つある。2014年の時点で、これらの施設にアメリカだけで250体が保存されており、1500人が自らの体を死後に冷凍保存するよう契約を結んでいる。
(via Europost)
費用は300万円~2000万円ほどと幅広い。たいてい生命保険の給付金で支払われている。この費用には、依頼者が亡くなったときに行う凍結処理、ドライアイスを用いた施設までの輸送、無期限の液体窒素(-196℃)による冷凍保存、将来の蘇生までカバーされている。
(via wikipedia)
だがこの技術については、科学者の大多数が懐疑的であり、偽医療とみなしている。人体の凍結によって生じる組織の損傷は不可逆であり、現在の技術ではどうやっても修復不可能だからだ。
人体冷凍の大きな問題は、凍らせる際に内部で氷が形成され、組織が破壊されてしまうことだ。だが、たとえ遺体に凍結防止液を循環させ氷の形成を阻止したとしても、重大な脳の損傷が引き起こされてしまう。
(via Pixabay)
そのため冷凍保存された人を蘇生するには、分子レベルでの脳の修復を可能とする技術が必要となる。そのような技術の発展は、もし可能だったとしても、遥か遠い未来の話になることは間違いない。
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コメント一覧
始皇帝が死んだのは49歳とちゃうか?
ご指摘ありがとうございます。誤っていましたので、修正させていただきました。