地球上で最もレアな元素
あらゆる物質の構成要素となる元素は、現在181種の存在が確認されている。人工的に作られる元素を除き、この中で最もレアな天然元素は何だろうか?
(via perkszone)
それは元素番号85の「アスタチン」である。地球上に存在するこの元素の量は、30gに満たないと推測されている。貴金属として誰もが知っている金の量が約20万トンなので、いかにその量が少ないか理解できる。
スポンサーリンク
(via Wikipedia)
アスタチンは細かな分類で見ると、39種類に分けられる(同位体)。その中の全てが強い放射能を持ち、それら多くが半減期1秒以下である。これはつまり、今存在しているアスタチンは別の元素へと変わって、明日には無いだろうし、昨日には存在すらしていなかったかもしれないのだ。
また最も寿命が長いアスタチンでも、半分になるまでの時間は、8.1時間である。たとえいずれかのアスタチンを手に入れることができたとしても、あまりにも短寿命であり危険な放射能を持つため、詳細な研究は困難をきわめる。
(via wikipedia)
原子力発電などで核燃料となるウランは、放射線を出して軽い元素へと変わり続ける。その過程でアスタチンができるが、それは一瞬だけ。この生成されたアスタチンも、放射線を出してビスマスやポロニウムへと変化していく。
(via Photographic Periodic Table)
当記事の写真で紹介している光る鉱石は、実はアスタチンそのものではない。これはアスタチンと一緒によく紹介されているが、リンカイウラン石と呼ばれ、UVライトで黄緑色の蛍光を放つ鉱物である。
化学式はCa(UO2)2(PO4)2であり、この中にはウラン(U)が含まれており、これが放射性崩壊を起こし、アスタチンへと変わるのだ。
人工的に作るとしてもごく少量しか作れないのだが、その単体を肉眼で見られない大きな理由は、強い放射能のためである。アスタチンが目に見えるほどの量になると、自らの放射能によって熱が生成され、昇華して消失してしまうからだ。
未だ肉眼視されたことはないものの、色は黒あるいは銀色と推測されている。
(via ChemistryScore)
2番目、3番目に希少な元素も、やはりウランの核分裂生成物
(via wikimedia)
ウランの放射性崩壊により生成される元素は、レア度がかなり高い傾向にある。アスタチンについで2番目に量が希少とされているのが、フランシウムである。その量はアスタチンと同等で、地球上には20~30gしかない。
(via wikimedia)
そしてフランシウムは、自然に産出される元素の中で最も不安定である。半減期は最も長いものでも、22分しかない。またアスタチンと同様、合成は難しく、自らの放射能による熱で昇華するため、単体を肉眼で見ることができない。
(via wikimedia)
3番手はプロメチウムであり、地球上に常時存在する量は、500~600gと見積もられている。これまでの元素2種類と比べればずっと安定で、半減期は長いもので17.7年。
化合物としては塩化物(PmCl3)が安定であり、放射性も弱く、青白色~緑色の蛍光を放出する性質から、かつては時計の文字盤の夜光塗料に用いられていた。ただし現在では、安全性の問題から別の材料に代替されている。
ディスカッション
コメント一覧
イチコメ∩^ω^∩