人類の歴史の中で、人類の進歩に最も大きなダメージを与えた人は?

海外掲示板Redditで「人類史の中で、一人の人間が人類の進歩に最も大きなダメージを与えたのは?」という質問が投稿され、多くの回答が寄せられた。それらのなかで、多くの人の興味を集めた回答をご紹介していこう。

トマス・ミジリー(1889年~1944年)

(via wikimedia)

ミジリーの発明したほとんどものが、人類に深刻な害を与えている。その一つが、1920年代に大量生産された有鉛ガソリン(テトラエチル鉛)。

この発明によって、鉛を含む排ガスが大量に排出され、成長期の子どもたちの血中鉛濃度が上昇し、認知機能や身体の成長などで多くの健康問題が発生した。また複数の国で、青少年の暴力行為の増加が、血中鉛濃度の上昇と一致していることが明らかになった。

2つ目は、オゾン層に深刻な影響を与えるフロンの発見に重要な役割を果たしたこと。2020年においても、南極上空のオゾンホール(オゾン濃度が低い場所)は、約2,300万平方kmに達している。

(via wikipedia)

ミジリーの発明がもたらした影響は広範囲に及び、今もなお続いている。有鉛ガソリンもフロンガスも既に禁止されているにもかかわらず・・

 
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ギー・ド・ショーリアック(1298年~1368年)

(via wikipedia)

ショーリアックは1300年代に活躍した外科医で、同じく外科医仲間のテオドリック・ボルゴニョーニに激しく反論した人物である。

ボルゴニョーニは、「傷口は包んで清潔に保つのが一番」と、傷口のケアに関する持論を展開した外科医だった。

ショーリアックは、”膿(うみ)は体液のバランスをとるためのものだ”と信じていた古代ギリシャの外科医ガレノスの教えに真っ向から反するボルゴニョーニの主張を嫌っていた。

ショーリアックの教えは広く受け入れられ、この男の無知が、外科における消毒法の発達をおよそ600年遅らせたと言われている。

 

アンドリュー・ウェイクフィールド(1957年~)

(via wikipedia)

”ワクチンで自閉症になる”という俗説を作った人物。ウェイクフィールドは、1998年に”新三種混合ワクチンの予防接種が自閉症を引き起こす”という論文を、最も権威ある医学誌『ランセット』に発表した。

後に彼の論文がデタラメだったことが判明し、2010年に『ランセット』はウェイクフィールドの主張を撤回したものの、ワクチンによる健康被害を訴える議論は現在でも数多く行われている。

その間、およびその後も、ウェイクフィールドの主張を信じた世界中の人々が三種ワクチンの予防接種を避けた。そのため多くの子どもが麻疹(はしか)に感染した。

そして最近の反ワクチン派の多くも、彼の思想に影響を受けていると思われる。

 

(via curiosmos)

伝えられるところによれば、フレキシブルガラス(柔軟なガラス)を発明した無名の人物が、ローマ皇帝ティベリウス・カエサル(紀元前42~37年)の前にその素材で作った酒器を持ってきたという。

その酒器の頑丈さをテストするため、破壊試験が行われたが、割れずにへこんだだけであった。文筆家のペトロニウスによると、この発明者は小さなハンマーで、簡単にそのへこみを修理したという。

【現代のフレキシブルガラス】

(via wikimedia)

この発明者が、その製法を知っているのは生きている人間の中で自分だけだと宣誓した後、皇帝ティベリウスはその男を処刑してしまった。

ティベリウスは、そのガラスが自ら所有する金や銀の価値を下げることを恐れたのだ。また当時、すべての金貨にはティベリウスの顔が描かれており、ガラスに顔を刻むのは困難だったとされる。

【ティベリウスが描かれた金貨】

(via ebay)

金貨に皇帝の顔が描かれていなかったら、平民はどうやって皇帝を認識できるだろうか?

 

ムハンマド・バフティヤール・ハルジー(不明~1206年死亡)

(via wikipedia)

12世紀のインドには、”ナーランダ”という世界最大の大学があり、世界中の知識人が学んでいた。学生1万人以上、教師も1,000人を数え、9階建ての校舎の他、六つの寺院、七つの僧院があった。そこの図書館には500万冊に及ぶ蔵書があったという。

【ナーランダの遺跡、世界遺産に認定済】

(via wikimedia)

ハルジーの指揮のもと、トルコ人がインドに侵攻した。彼らはほとんどすべての知識人を殺し、大学を破壊した。そして図書館を燃やした。図書館は3ヶ月間燃え続けた。これは、人類にとって最大の損失ではないだろうか。

 

中国・明の第3代皇帝、永楽帝は1400年代初頭に、当時最大の貿易・探検船団であった鄭和(ていわ)の船団を焼却するよう命じた。

【鄭和の像】

(via wikimedia)

これをきっかけに中国の各王国は孤立していき、結果的に中華帝国は崩壊し、間接的に現在の中国(共和制)が台頭することになった。

【鄭和の船団を描いた17世紀初頭の木版画】

(via wikipedia)

また、中国との貿易が減った結果、世界全体の富が減少した。もし中国が探検を続けていたら、ヨーロッパ人ではなく彼らが北アメリカを植民地化していた可能性もある。

これは人類の進歩を大きく変えるものではないかもしれないが、世界を決定的に違う方向に向かわせる出来事の一つだと思う。

 

ガヴリロ・プリンツィプ(1894年~1918年)

(via wikipedia)

フェルディナント大公を狙撃し、第一次世界大戦の引き金を引いた人物。さらに、第一次世界大戦の結果が、そのまま第二次世界大戦へとつながっていった。 被害は、戦争で死んだ数千万人だけではない。当時の楽観的な時間と、それによってもたらされた進歩が失われてしまった。

戦後、人々は大胆なアイデアに寛容でなくなり、進歩の可能性に懐疑的になった。その結果、どれだけの進歩が失われたのだろう。

 

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雑学

Posted by uti