病院中毒に陥った人の奇妙なケース(ミュンヒハウゼン症候群)

この世の中には、身体は何でもないのに病人のふりをして病院にかかり、通院や入院を繰り返す人たちがいる。一体何のためにこんなことをするのか不思議に思うかもしれない。だがこれらの患者の多くは、周囲の関心や同情を引くために行っており、病人として医師や看護師に大切にされることにより、精神的な満足感を得ようとしている。

この症状は、ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれる精神病の一種である。その原因となるのは、幼児期の精神的なトラウマや病気、あるいはパーソナリティ障害だと指摘されている。根本的な治療法は確立しておらず、完治は難しいとされている。

今回の記事では、ミュンヒハウゼン症の病院中毒に陥った患者の事例を2件ご紹介していこう。

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1.各地の病院をさまよい歩く人

(via pixabay)

2005年、20歳の男性が胸の痛みを訴え、ニューメキシコ州の病院を受診した。医師は、彼の訴えに基づいてMRIや胸の切開手術による大動脈壁の生検などを行った。だがいずれの検査でも、異常は何も見られなかった。

それでも彼は胸が痛いと言い続けた。だがそれは後に、彼のウソだと分かった。彼は以前にも、他の州の複数の病院で同じ症状を訴え、何度も入退院を繰り返していたのである。この事実が明らかになると、彼は精神病院に送られることが決定された。

しかしそれから4年後の2009年、彼は前の病院から1600km離れたオハイオ州の病院に現れ、同じ症状を訴えたのである。だが今度はウソがばれないよう、MRIの検査に必要な造影剤にアレルギーがあると主張し、検査を拒否した。また医師が他の治療法を提案しても、アレルギーがひどいと言い、受け付けなかった。

【MRIの造影剤:血管内に投与する】

(via wikimedia)

また彼は、かつて重度の心臓発作を起こし、ドイツで心臓移植を受けたとも主張していた(そのような記録は見つかっていない)。後にこの病院の医者は、彼が6年間にわたって性別や誕生日を偽装し、何度も患者として自分のもとに訪れていたことを知ったのだった。

2. 600以上の病院で患者となったウェンディー・スコット

(via listverse)

ミュンヒハウゼン症候群の患者で本名が公開されることは珍しく、この病は多くの医者が治療困難と考えている。

だがウェンディー・スコットは実名を公表して病気の存在を多くの人に知らしめたうえ、亡くなる前にこの病気を完治させた。そして彼女は、記録に残っている最も重症なケースであった。

彼女は12年の間に、自宅のあるロンドン周辺の病院を皮切りに、イギリス国内のみならず、ヨーロッパ中の病院を訪れ、600以上の病院の患者となった。

彼女が病院にかかる時は、たいてい救急外来におもむき、お腹をつかんでうめき声をあげ、病気を装った。しかし、彼女の身体を検査しても悪いところは見つかるはずがなかった。

(via pixabay)

だがウェンディーがお腹が爆発しそうだと言い張れば、医者も何もしないわけにはいかず、緊急の試験開腹を行う場合もあった。こうして彼女は、本来なら不必要な手術を何度も受けた。その回数は42回にも及び、彼女の身体は手術痕で傷だらけになっていた。

しかし彼女は、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、30歳の時に病人のふりを止めることが出来たと答えている。それは子猫のおかげだったそうだ。

可愛い子猫の世話をしなければならないと思えば、病気で入院している訳にはいかなかったからだ。この病気を克服した彼女は、自らの経験を生かして他のミュンヒハウゼン患者に援助を行っていた。

(via wikipedia)

それから20年後、彼女に残酷な運命のいたずらが起こった。今度は、本当にお腹の激痛に襲われたのだ。だがイギリス中の病院で彼女はブラックリスト入りしていたため、どの病院も彼女を相手にしなかった。

彼女がアメリカまで渡って診察を受けたときには、既に手遅れだった。彼女は進行性の大腸がんだった。彼女がガンにかかったのも、今までにたくさん受けた診断が原因になったのではないかと言われている。

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雑学

Posted by uti