琥珀の中に見つかった驚くべきもの
(via shaft2007)
琥珀は、樹木に含まれる樹脂が高温・高圧のもとで化石になったものだ。その美しさから、ヨーロッパでは古くから宝飾品として珍重されてきた。
琥珀は地中で固化して出来るため、その内部に生物が混入することがある。生物入りの琥珀は、通常の生物化石と比較すると綺麗に保存されるので、きわめて有用な化石資料となる。
今回は生物入り琥珀の中でも、特に価値の高い珍しい資料を5つご紹介していこう。
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1.恐竜の尻尾
(via Ryan C. McKellar)
この琥珀の中には、9900万年前の恐竜の尻尾が封じ込まれている。恐竜の化石で骨や軟部組織、羽毛までほぼ完全に保存された状態で見つかったものは史上初である。
これほど貴重なものが、ミャンマーの琥珀市場で普通に売られていた。古生物学者のリダ・シングが、この琥珀に気づかなければ、その価値は分からないままだったかもしれない。
(via Ryan C. McKellar)
繊細な羽毛で覆われた柔軟な尻尾は、子どものコエルロサウルス類のものだとされる。コエルロサウルス類は三本指の前肢と細長い尾が特徴的で、ティラノサウルスも含まれる。
そして羽毛の構造から、羽毛は飛ぶためではなく、装飾あるいは体温調節のためにあったと考えられている。また琥珀に残されていた色素から、背中側は栗茶色、腹部は白っぽい色だったことも分かった。
(via Cheung Chung-tat)
2.人類を絶滅させかけた菌を保有する古代ノミ
(via George Poinar Jr)
琥珀に閉じ込められた3000万~2000万年前のノミに、黒死病をもたらすペスト菌とされる細菌が見つかった。黒死病は14世紀頃に人類を滅ぼしかけた感染症であり、世界人口の1/3を死亡させている。
このペスト菌とされる細菌は、琥珀のノミの吸血部位(吻)に見つかった。細菌の完全な特定は出来ていないが、サイズや形から黒死病を引き起こしたペスト菌の祖先ではないかと考えられている。
(via abc)
これを発見したポイナー博士は、このペスト菌が人類誕生以前から動物の絶滅を引き起こしていた可能性があると指摘している。
また6500万年前に絶滅した恐竜は、隕石の衝突や火山の爆発だけでなく、この感染症の蔓延も絶滅の因子になったかもしれないという。
3. 1億年前の翼
(via RYAN C. MCKELLAR)
恐竜が全盛期だった白亜紀頃の原始的な鳥類の翼が、琥珀の中に見つかった。この翼は、恐竜から分岐して進化した初期の鳥類、エナンティオルニス類のものだと考えられている。
(via wikimedia)
エナンティオルニスは現生の鳥と異なり、クチバシには歯が生えており、前足には指と爪を残していた。だが琥珀の翼を分析すると、その構造は現生の鳥とほぼ同じであることが分かった。
だがこの原始的な鳥類も、6600万年前に起きた大量絶滅で直接の子孫を残すこと無く、恐竜とともに絶滅した。
4.古代のエイリアン
(via wikipedia)
ミャンマーの鉱山で見つかった琥珀に、科学者を驚嘆させる1億年前の昆虫が封入されていた。この昆虫は頭はカマキリ、体はアリのようであり、既存の31個ある昆虫の分類に区分けすることができないくらい変わっていた。
大きく飛び出た目と逆三角形の頭部が特徴的で、E.T.に登場する宇宙人のようであった。そして最もユニークなのが、逆三角形の頭の頂点に首がくっついていることだ。
(via POINAR)
さらに奇妙なことに、頸部には外敵を追い払う毒の分泌腺と思われるものが見つかった。
(via POINAR)
古生物学者のボイナー博士は、最初にこの化石を見つけた時、地球外から来た何かのように思えたそうだ。実際にこのような特徴を持つ昆虫は、100万種いる昆虫のなかでも本種だけとされる。
その変わり様から、この昆虫が属する新たな分類、アエティオカレヌス目(Aethiocarenus)がつくられることになった。ちなみに一般的なアリはハチ目、カマキリはカマキリ目に分類されている。
5.侵入者
(via palaeocast)
この琥珀には、死にゆく宿主から逃げ出そうとした線虫が捕らえられている。線虫は地球の初期の生命体と考えられており、4億年以上前の琥珀に入った個体も見つかっている。
大半の線虫は地中や海中に暮らすが、一部は写真のように昆虫などの体内に寄生して成長し、繁殖の時期が来ると宿主の肛門あるいは体壁を突き破って脱出する。
だが写真の個体は、宿主のウンカが死ぬことを察知し、新たな寄生先に逃げ出そうとしたが、天然樹脂の中に閉じ込められ、宿主とともに死ぬ運命になった。
ディスカッション
コメント一覧
はぇ〜…
ロマン溢れる琥珀たちだ。
線虫の運の悪さよ…