美しく鮮やかなヤドクガエル15種類+毒性解説
ヤドクガエルとは、主にブラジルやコロンビアなどの南米の熱帯雨林に生息するカエルです。ほとんどの種が鮮やかな色彩をしており、体の表面に毒を持っています。
今回の記事では、「熱帯雨林の宝石」とも呼ばれるヤドクガエルの種類を色々とご紹介していこうと思います。
1.モウドクフキヤガエル
(wikimedia)
スポンサーリンク
鮮やかな黄色の警戒色をまとったヤドクガエルです。成体でも最大5cmほどで、それほど大きくはありません。
体色は、黄色が最も知られていますが、ミントグリーンやオレンジの個体もいます。
(wikimedia)
ヤドクガエルの中で最強の毒を保有する
(wikimedia)
モウドクフキヤガエルの体表面は、バトラコトキシンという猛毒でおおわれています。その毒におかされると、神経細胞の伝達が阻害され体全体がマヒし、心不全を起こします。
本種は約1mgの毒を保有しており、この量はおよそ1万匹ものネズミを殺害可能な量です。そして人間なら10~20人、体重6トンに達するアフリカゾウでさえ2匹殺すことができるのです。
もし1gの毒を集めたなら、1万5千人の命を奪うことが可能です。
毒矢として使われる最も一般的な種
(Digital Photography)
かつて熱帯雨林で暮らすコロンビアの先住民・チョコ族が獲物を狩るための毒として、本種を利用していました。
このカエルを注意深く火であぶり、体表面から液体が染み出してきたところに、矢じりをひたすのです。一度矢じりに付着した毒は、2年以上衰えることなく、その毒性を発揮します。
非常に強い毒だが、手で触れただけでは効果がない
全てのヤドクガエルが持つ毒は、皮ふへ直接侵入することはできません。口や目、傷、粘膜部位などに入って初めて、その毒性が発揮されます。
ただし、手で触るのはかなり危険です。たとえ手を洗ったとしても、わずかに残存した毒が、間接的に体内に入り込む可能性があるからです。
2.コバルトヤドクガエル
(Alex Bartok)
南米・スリナム南部のみで見られるカエルです。鮮やかな青色に黒のぶち模様が体全体に広がっています。
大きさは最大でも4.5cmほどで、黒のぶち模様が個体ごとに異なるので、個体間の識別が比較的簡単にできます。
(wikimedia)
モウドクフキヤガエルに比べると毒は圧倒的に弱いため、ペットとして人気の種となっています。また飼育下では無毒になります。
毒を持たなくなる理由は、生息地にいる有毒のアリやノミを食べることで、毒を作っているためです。市販のカエル用のエサには、毒が含まれていないため、毒ガエルにはならないのです。
3.アシグロフキヤガエル
(drriss & marrionn)
黄~オレンジ色のボディと黒色の脚が特徴的なヤドクガエルです。コロンビア西部のチョコ地域で見られます。
ヤドクガエルでは2番目に強い毒を持つ
(wikimedia)
モウドクフキヤガエルに次いで強い毒を持つのが、本種です。実際に人の死亡例もあり、たった0.15mgの毒で大人1人を殺傷可能です。
そしてこの種も、先住民のチョコ族により毒矢として利用されていました。毒は、モウドクフキヤガエルと同じバトラコトキシンであり、筋肉のマヒと呼吸器障害を引き起こして死に至らしめます。
4.アイゾメヤドクガエル
(wikimedia)
黒色の背中に黄色の模様、そして腹部は藍色となるのが特徴です。ヤドクガエルの中では最大種と言われており、全長は最大で7cmに達するとされています。
毒の強さは、モウドクフキヤガエルの1/1000
(wikimedia)
本種の毒は、プミリオトキシンと呼ばれるもので、モウドクフキヤガエルが持つバトラコトキシンの1000分の1の毒性です。
それでも小動物にとっては、非常に危険な動物であり、食べてしまえば致命的です。
人の粘膜に触れた場合は、強い痛みとけいれんが起こりますが、死ぬことはありません。
色や模様がバリエーション豊か
(wikimedia)
(wikimedia)
いずれも黒色がベースカラーですが、黄色や白、青のシマやブチ模様などが入ります。同じ種でも個体や地域ごとに、その見た目はかなり異なります。
5.ミイロヤドクガエル
(Flickriver)
ミイロヤドクガエルは、南米・エクアドル固有の種です。体長が2.2cmほどしかなく、カエルの中でも小さい方です。
毒は、未来の鎮痛剤として期待されていた
(Flickr/Pradeep Kankanalu)
ミイロヤドクガエルの毒は、1人の大人を殺せるほど強いとされています。かつては、このカエルの持つ毒を利用した鎮痛剤が研究されていたこともあります。
本種が持つ毒から作った鎮痛剤「エピバチジン」は、モルヒネよりも200倍痛みをやわらげる効果があり、しかも中毒性がないとして注目を集めていました。
しかし、極めて少量の投与でも致死量に達してしまうことが明らかになり、現在では鎮痛剤としての開発は行われていません。
6.イチゴヤドクガエル
(ggallice)
コスタリカやパナマなどの中央アメリカで一般的に見られるヤドクガエルです。大きさは2cm前後であり、色は基本的にイチゴ色ですが、地域ごとに模様が異なり、そのパターンは15~30になるとされています。
(Flickr/Pavel Kirillov)
中にはイチゴ色ではなく、緑色の個体もいます。
(wikipedia)
毒性は人間に対してはそれほど強力ではありません。本種が持つ毒は、アイゾメヤドクガエルと同様のプミリオトキシン毒であり、粘膜部が触れると強い痛みを引き起こします。
7.ヒメキスジフキヤガエル
(drriss & marrionn)
英語ではラブリィ・ポイズンフロッグ(Lovely Poison Frog)というかわいい名前です。
黒色をベースに、口元から背中までシマ模様が走っているヤドクガエルです。主な生息地はコスタリカなどの中央アメリカで、大きさは2cm前後と小型です。
毒は弱く、一部の個体には毒を保有していないものさえいます。そのためペットとしての人気が高くなっています。
8.ココエフキヤガエル
(bigpicture)
アシグロフキヤガエルと同レベルの猛毒、バトラコトキシンを保有する危険なヤドクガエルです。本種が持つ毒は、たった0.1mgの摂取で人が死にます。
ココエフキヤガエルの特徴は、黒色の体色に黄色あるいはオレンジの縞模様が背中に入っていることです。またお腹や脚には青や緑の小さな斑点が複数あります。
本種も先住民のチョコ族が吹き矢に毒を塗るために利用していた種であり、その矢を受けた動物は即座に毒が効いて、死に至るといいます。
9.キスジフキヤガエル
(Arenal Natura)
背中に入った2本のオレンジ線が特徴のヤドクガエルです。コスタリカに生息しており、体長は平均3.5cmほどです。
ヤドクガエルの中で4番目に強い毒を持つ
モウドクフキヤガエルやココエフキヤガエルなどの近縁種である本種は、この2種には到底及ばないものの、比較的強い毒を保有しています。
傷口に毒が付着すると、激痛に襲われ、けいれんを起こすことがあります。また体内へ大量に吸収されれば、体のマヒが引き起こされます。
10.セマダラヤドクガエル
(wikimedia)
ブラジルの熱帯雨林に生息するヤドクガエルです。体長は4cm前後で、基本的に背中側が黄&黒のまだら模様で、お腹側が黒色となっています。
色合いは個体によって異なり、ミント色から青色、まだら模様がないものまでおり、同じ種でも個性豊かです。
(silveroftheluna)
11.セアカヤドクガエル
(bigpoint)
その名の通り、背が赤いヤドクガエルです。お腹は黒色、脚部はコバルト色で黒ぶち模様が入っています。
全長約1.5cmほどと小型ですが、比較的強い毒を持っており、本種が持つ毒はニワトリくらいなら殺せるほどの威力があります。人間に対してもこの毒は有効で、傷口などに触れれば激痛に襲われます。
12.マダラヤドクガエル
(Greg Gilbert)
黒&緑模様の鮮やかな体色と体長1.9cm程と小さいことから、ペットとしてはかなりの人気がある種です。
一般的に知られているのは上記の写真のような色合いですが、ライム、エメラルド、緑、トルコ石色のをした個体もいます。
(Wikimedia)
毒は比較的強く、一匹が保有する毒で1人の大人くらいなら命を奪うことも可能です。
13.キオビヤドクガエル
(wikimedia)
黄色(黒色)の横帯が特徴的なヤドクガエルで、体長は3~5cmほどあります。南米のベネズエラでよく見かけられますが、ブラジル、ガイアナにも分布しています。
本種は、唯一乾季になると、落ち葉に入って休眠するヤドクガエルとしても知られています。
14.ハイユウヤドクガエル
(telesurtv)
アミメ状の模様が特徴的なヤドクガエルで、体色のベースは黒が一般的ですが、オレンジ、赤、白、青などのバリエーションがあります。模様も網目が大きかったり、小さかったりと様々です。
本種は心臓に障害をもたらすヒストリオニコトキシンという毒を保有していますが、毒性は弱く、モウドクフキヤガエルの数千分の1ほどしかありません。
↓ヤドクガエルではないけど・・
15.コロボリーヒキガエルモドキ
(Zoos Victoria)
最後に、本種は毒を有していて、鮮やかな体色をしていますが、ヤドクガエルではなく、カメガエルの一種です。
しかも中南米ではなく、オーストラリアの標高の高い地域に生息しています。体長は3cm前後、体色は黄色で、所々に黒の模様が入り、筋肉で盛り上がった線状のこぶが背中に見られます。
自ら毒を作り出すカエル
ヤドクガエルはいずれも、毒を持つアリやノミなどを食べることで、毒を体表面に分泌しています。しかし本種は、食べ物によらず毒を作り出すことができます。
その毒は弱いものの、捕食者から身を守ったり、微生物からの感染症を予防するのには十分な役目を果たしています。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません