地球上最強の毒・猛毒ランキングトップ10(半数致死量)
毒の強さをはかる尺度である、半数致死量を元に、物質の毒の強さをランキング形式でご紹介します。
半数致死傷は、実験動物の半分が死ぬ致死量であり、小さいほどその毒が強いことを示しています。ここで扱う値はマウスやモルモットに投与した場合の致死量です。
以下、半数致死量をLD50と表記します。
10位.コノトキシン 青酸カリの約100倍
LD50値:0.012~0.03mg/kg
(via Chemical book)
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イモガイが作り出す神経毒です。イモガイは、この毒を使い、エサとなる魚や虫を捕食しています。
コノトキシンは、イモガイが小型のエサを捕まえるためだけに持っているとは思えないほど強力です。その毒の強さは、最大でインドコブラのおよそ37倍。
最悪なことに、血清が存在しないため、毒に対する治療の手立てがなく、もし毒に冒されたら、完全に毒が抜けきるまで耐え抜くしかありません。
(via wikimedia)
イモガイはおよそ600種いて、多くが毒を有していますが、その中で最も強い毒であるのが、アンボイナガイです。
(via wikimedia)
アンボイナは、沖縄で捕れる貝です。その毒の強さから毒ヘビのハブに例えて、地元では「ハブガイ」と呼ばれることがあります。また刺されたら、岸に戻る半ばで絶命するという意味合いから「ハマナカー(浜半)」とも呼ばれます。
アンボイナには、矢のような伸びる舌があり、これをエモノに突き刺して猛毒を注入し、即死させます。キレイな貝だと思って、貝殻に触れようとした人が、この矢舌に襲われ命を落とすことがたびたびあります。
1996年までに少なくとも沖縄、鹿児島県で23人がアンボイナに刺されており、そのうち8人が亡くなっています。
その毒の症状は、刺されたと同時に激痛に見舞われ、患部の腫れ、めまい、おう吐、発熱が引き起こされます。最悪の場合、全身のマヒ症状と呼吸困難により絶命します。しかもこれらは数時間以内に全て起こりうるのです。
9位.テトロドトキシン 青酸カリの約750倍
LD50値:0.01mg/kg
(via wikimedia)
猛毒といえば、テトロドトキシンと言われるほど悪名高い毒です。フグに含まれることで有名であり、最も日本人との関係が深い毒でもあります。
フグを食べる文化は世界でもかなりまれであり、韓国や中国などでも消費されてはいますが、日本の消費量が最も多く、年間5000トン近くに上ります。
(via wikimedia)
それゆえ中毒数も多く、年間20~50人がフグを食べて、中毒を起こしています。その多くは、ふぐの調理免許を持たないシロウトが、みずからさばいて食べたことが原因です。
食中毒としては死亡率が高く、6.8%に達します。1996年から2005年にかけて、全国でフグによる食中毒は315件発生しており、31名が死亡しています。
(via wikimedia)
フグは元から毒を持っていたわけではありません。元々は細菌が持っていたもので、この細菌をヒトデや貝が食べ、それらをフグが好んで食べることで毒化するのです。
なので、地域や個体、季節によっては全く毒を持たない個体もいます。また、一から人の手で育てた養殖物も、毒を持たないことが多いです。
毒は卵巣と肝臓に高濃度で含まれており、自分自身と卵の身を守ることに役立っています。
神経毒と呼ばれるものであり、体内の神経伝達を阻害して、全身にマヒを起こさせ、呼吸困難で死に至らしめます。
もし、フグの有毒部位を摂取したら、20分以内に口元がしびれだし、徐々に全体へとしびれが広がっていきます。摂取量が致死量以上であったなら、たいてい24時間以内に死亡します。
毒に対する有効な治療法はなく、人工呼吸で命をつなぎつつ、毒が抜けるまで耐え抜くしかありません。
8位.サキシトキシン 青酸カリの約2,850倍
LD50値:0.00263mg/kg
(via wikimedia)
サキシトキシンは、有毒渦鞭毛藻(ユウドク・ウズベンモウソウ)と呼ばれる、目に見えないほど小さな生物が作り出す猛毒です。
ウズベンモウソウは、小さいながらも、自分で泳ぐためのしっぽ(べん毛)を2本持っています。これらの微細な生物は、海や川を真っ赤に変える「赤潮」を作ることでも知られています。
(via wikimedia)
この藻を貝類やカニが食べて毒化します。通常は、これらを食べて時間が経つと、毒は排出されますが、ムール貝(ムラサキイガイ)やマガキなどは毒をためこみやすく、人が食べると中毒を起こすことがあります。
(via wikimedia)
ただし市場に出回っているものは、厳重な検査体制にあるため、食中毒を起こすことはありえません。
毒性はテトロドトキシンと同様であり、体をマヒさせる神経毒です。多くの場合、呼吸困難で死にいたります。治療法も確立されておらず、毒が抜けるまで安静にするほかありません。
7位.バトラコトキシン 青酸カリの約3,750倍
LD50値:0.002mg/kg
(via wikimedia)
南米の宝石とも言われる「フキヤガエル」が持つ猛毒です。
(via wikimedia)
毒は神経細胞のナトリウムチャンネルを開放状態にし、筋肉を収縮させ、心臓発作を起こす作用があります。この毒も、治療法が未だ見つかっていません。中毒になったら、自分の体力との勝負になります。
(via wikimedia)
モウドクフキヤガエルは、体表にバトラコトキシンの分泌液をまとっており、これでヘビや鳥から身を守っています。1匹で1mgほどしか毒を保持していませんが、これだけで1万匹のネズミを死に至らしめます。
もちろんこの毒量は人間にも致命的であり、たった1匹で大人10~20人の命を奪います。もし1gのバトラコトキシンがあれば、1万5千人が殺戮可能であると見積もられています。
6位.ベロ毒素 青酸カリの約7,500倍
LD50値:0.001mg/kg
(via wikimedia)
ベロ毒素は、O-157に代表される腸管出血性大腸菌が分泌する毒素です。彼らの住処は、ウシやブタなどの家畜の大腸です。感染は、家畜の糞便が私達の口に入れる食料や水に入りこむことで起きています。
O-157の食中毒で一番多いのが、生焼けの肉を食べて起こすケースです。そのほか、屋台で売られている冷やしきゅうりなど、生野菜での感染も確認されています。
(via C.T. P)
O-157の感染力はきわめて強く、通常の菌が食中毒を起こすのに100万個以上を必要とするのに対し、O-157は100個程度しか必要ありません。ただし、75℃の熱で1分間加熱すると、いとも簡単に菌を殺すことができます。
ベロ毒素は体内に入ると、細胞のタンパク質合成を止め、細胞を死に至らしめます。多くの場合、大腸にとりついて細胞を破壊し、軽い下痢や腹痛、あるいは血便、水状の便などの症状を引き起こします。
症状が進行すると、毒素が血液中に吸収され、全身に移行し始めます。特に影響を受けるのが腎臓であり、腎不全を起こして命を落とすことがあります。
5位.ダイオキシン 青酸カリの約12,500倍
LD50値:0.0006mg/kg
(via wikimedia)
ダイオキシンは、食品トレイやポリ袋を燃やすことで発生する成分の総称です。全部で419種ありますが、そのうち31種に強い毒性が認められています。
致死量については、動物によってかなり異なることが分かっています。モルモットのLD50値が、先に記述した0.0006mg/kgに対して、マウスは5mg/kgと8000倍もの違いがあります。そのため、ヒトに対する致死量については、よく分かっていません。
しかし、これまでに起きた人体へのダイオキシン被爆から、その毒性はある程度推測することができます。
・1960年代にベトナム戦争で、ダイオキシンを含む枯葉剤が大量にまかれた結果、先天的に口が裂ける口蓋裂(こうがいれつ)の赤ちゃんが激増。
(via wikimedia)
・1976年にイタリアの農薬工場で爆発事故が起き、新宿区に相当する範囲に30~130kgのダイオキシンが飛散。被爆地域の翌年の流産率が36%に到達。また生殖機能に影響を受け、女児の出産が増加。
それ以上に長期的な影響も甚大でした。被爆した人の多くが、ガンや心臓病、糖尿病などの症状に苦しんでいることが、後の調査で明らかになったのです。
4位.パリトキシン 青酸カリの約30,000倍
LD50値:0.00025mg/kg
(via wikimedia)
パリトキシンは、イワスナギンチャクが持っている猛毒です。
(via wikimedia)
この毒はサキシトキシンと同様、イワスナギンチャクが元から持っていた毒ではありません。根源は、サキシトキシン毒でも登場したウズベンモウソウです。
パリトキシンを持つウズベンモウソウを食べることで、イワスナギンチャクは毒化し、触手に毒を持つようになりました。
極めて強い毒ですが、イワスナギンチャクによる中毒例はほとんど報告されていません。アクアリウム愛好家がイワスナギンチャクを水槽で飼い、これを素手で触って刺され、呼吸が苦しくなったというくらいです。
日本での中毒例は、イワスナギンチャクをアオブダイが捕食するため、そのアオブダイを食べることで、ごくまれにあるようです。
3~36時間以内に筋肉痛や体のしびれ、けいれんなどを引き起こします。ひどくなると、呼吸困難、腎不全などで死に至るとされています。
3位.マイトトキシン 青酸カリの約44,100倍
LD50値:0.00017mg/kg
(via wikimedia)
海洋に存在する毒としては最強です。インド・太平洋域で見られる「サザナミハギ」が保有しています。
(via reef aquarium)
この毒も、パリトキシンなどと同様にウズベンモウソウから産まれたものです。藻類を好むサザナミハギが、この藻を食べて毒化します。
食用とされることは少なく、中毒を起こした事例はほとんど報告されていません。もしこの毒を摂取した場合、体のしびれやけいれん、そして呼吸困難で死に至ると考えられています。
2位.テタノスパスミン 青酸カリの約375,000倍
LD50値:0.00002mg/kg
(via wikimedia)
破傷風菌が産み出す毒素であり、破傷風を引き起こすことで知られています。その毒性は、1gで少なくとも数十万人を殺害可能とされています。
これほどの毒性を持っていますが、決して珍しい菌ではなく、世界中のあらゆる土壌の中に眠っています。そのため、農作業中の土いじりや、転倒で怪我した場合などに、傷口から入り込んで感染することがあります。
感染すると破傷風を発症します。破傷風はすさまじい痛みをともうな病気であり、全身が弓なりに激しくけいれんして、その力で背骨を骨折することさえあります。ひどい場合には、激しいけいれんで呼吸困難におちいり、死に至ります。致死率はきわめて高く、20~50%に達します。
(via Immunization )
2015年には、世界で20万人以上が感染し、6万人近くが亡くなっています。日本においても、1950年代は年間数千人が感染し、8割以上が亡くなっていました。しかし、四種混合ワクチン接種のおかげで、毎年100人程度の感染で抑えられています。
1位.ボツリヌストキシンA 青酸カリの約682,000倍
LD50値:0.0000011mg/kg
(via wikimedia)
この毒は、ボツリヌス菌が作り出す猛毒であり、たった1gで100万人以上を殺すことができます。そして約500gで、この世界に生きる人類全ての命を奪うことができる能力を秘めています。
(via MicrobeWiki )
非常に恐ろしい毒素ですが、これを産み出す菌は地球上のあらゆる土壌・川・湖などに生息しています。ハチミツにも、芽胞という形で菌が含まれることがあります。
(via pixbay)
ボツリヌスによる食中毒の多くは、加熱処理のされていない保存食品が原因とされています。かつては未加熱のハムやソーセージなどでよく起こっていましたが、食品添加物のおかげで食中毒はほぼ無くなっています。基本的に、この毒素は熱に弱く、100℃で1~2分加熱するだけで失われます。
ボツリヌス菌に感染した場合、吐き気があらわれる、汗やおしっこが出にくくなる、舌がもつれる、手足がしびれる、喉が乾くなどの初期症状が見られます。悪化すると、呼吸筋がマヒして絶命します。
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コメント一覧
リシンの欄に、アミノ酸のリシンの構造が示されている。
アミノ酸のリシンは必須アミノ酸に該当し、一日2.1グラムの摂取がWHOから推奨されるような栄養素である。
毒性があるのはタンパク質のリシンであるため差し替えるべきである。
大変ありがとうございます。修正させていただきました。
でも一番ヤバイのは、体重全てが致死量の70倍の藤の毒である鬼滅の刃の胡蝶しのぶ。ちなみに僕は、体重全てがボツリヌストキシンA。