遺伝子の突然変異がもたらした超人的な力

2019年8月21日

遺伝子変異によって特殊な能力を手に入れたケースをご紹介しよう。

1.車にひかれても骨折しない。厚くなりすぎる骨

【骨の厚みのため顔が四角くなる】

(via ihc2015)

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世界には、生まれつき超強靭な骨を持つ人がいる。現在その遺伝性疾患を持つ人は、100人ほどとされている。1958年にオランダの孤立した集落で初めて確認された疾患であり、硬結性骨化症と名付けられた。

この疾患を持つ人は、骨の成長が止まらなくなる。特に頭蓋骨、下顎は顕著であり、顔が歪んでしまうことが多い。骨量がきわめて多く、一般人に比べて骨密度が8倍にも達していたケースもある。

【頭蓋骨の重さは一般人の4倍近く】

(via Science direct)

また研究対象となった3~93歳の患者23名において、誰一人として今まで骨折を経験したことがなかった。中には車に衝突されても無傷で、何事もなかったように歩きだす人もいた。

【頭蓋骨の厚み:Dは疾患あり、Eは無し】

(via Science direct)

強靭な骨を手に入ることはメリットかもしれないが、一方でこの疾患には恐ろしいデメリットがある。骨の異常成長により、脳圧が高まって突然死する可能性があるのだ。

だがこの疾患を持つ人達は今後、骨粗鬆症を患った数億人の救世主になるかもしれない。骨の異常成長を発現する遺伝子は特定されており、この遺伝子が生産するタンパク質を利用して、骨粗鬆症を治療する薬が研究中なのだ。

2.痛みを感じないストリートパフォーマー

(via istolethetv)

パキスタンのある通りで、臆することなく焼けた木炭の上を歩くストリートパフォーマーの少年がいた。少年は痛い素振りなど一切見せることなく、腕を鋭いナイフで貫いてみせ、観客を驚かせていた。

(via mostodd)

この少年と偶然出会った科学者は、彼の協力を得て、どうして彼が痛みを感じないのか研究し始めた。彼は生まれてから痛みを感じたことがなかった。それは彼だけではなく、彼と血のつながりのある三家族全員がそうだったのである。

【体中が傷だらけになりやすい】

(via Chinese Medical Journa)

痛みという防御機構が働かないため、家族全員の体にあざや傷があり、ほとんどが骨折を経験していた。家族のうち2人は、幼少期の噛み癖で2/3の舌を失っていた。またパフォーマーの少年も、高い建物の屋根から飛び降りる無謀な挑戦中に命を落とした。

だが驚くべきことに、家族は痛みを感じないこと以外、正常だった。触覚も温度感覚もあり、神経疾患の兆候は一切見られなかった。無痛症は昔から知られている病気だが、汗をかけず体温調節ができなかったり、知的障害になったりするなど、他の疾患を併発することがほとんどである。

特異な遺伝子変化が起きていた

(via maxpixel)

研究の結果、彼らはたった一つの遺伝子が原因で、痛みを感じなくなっていたことが判明した。それはSCN9Aと呼ばれる遺伝子で、これが一般人と異なっているため、痛みを感じる特定の神経線維においてナトリウムイオンの流動が阻害されていた。

痛みをつかさどる遺伝子は、少年らを対象とした研究で初めて明らかになった。この成果を利用して、痛みの神経通路を完全に遮断してしまう革命的な鎮痛剤の開発が期待されている。

3.人間の生物学的限界を超えた最強の肉体

【世界最強の幼児ともいわれた3歳のリアム・フックストラ】

(via abcnews)

遺伝子の突然変異により、筋肉が異常に肥大してしまう人たちが極稀にいる。たとえば2008年に3歳だったリアム・フックストラは、生後5か月で十字懸垂をし始め、8か月には腕立て伏せができるようになった。普通は生後8か月なら、つかまり立ちをやっと始めるころだ。

またこの遺伝子を持ったヨチヨチ歩きの幼児が、4.5㎏のウェイトを持ち上げたり、かんしゃくを起こしてパンチで壁に穴を開けたりすることがあったという報告もある。

筋肉の肥大を抑制する遺伝子の欠陥が原因

【この遺伝子変異を持つ12歳少年。特別な運動は一切していない】

(via wikimedia)

異常な筋肥大は、ミオスタチンというタンパク質を製造するMSTN遺伝子の突然変異が原因であると分かった。ミオスタチンは筋成長を抑制し、筋肉が大きくなりすぎないようにしている。だがここに欠陥があると、ミオスタチンは生産されず、筋肉の成長が止まらなくなる。

【同じ遺伝子変異を持つ肉牛種のベルジャンブルー】

(via triggatrey12 )

そのためこの疾患を持つ人たちは、一般人と比べると筋肉量は2倍、脂肪は半分くらいしかない。また代謝が異常に早いため、食後すぐに空腹になってしまうそうだ。

4.ソーセージがゆで上がるほどの高電圧を流せる体

(via reddit)

バッテリー人間とも呼ばれるセルビア人のスラヴィサ・パジックは、最大2万ボルトもの電圧に耐えられる。普通の人なら50ボルトでも火傷を負い、2万ボルトなら感電して即死しうる。だが彼は火傷を負うことも、痛みを感じることもない。

(via oceanofweb)

スラヴィサは自分に流す電気で、白熱電球を点灯させたり、ソーセージを調理したり、コップの水を100℃近くまで熱したり、アルコールに浸したものを発火させたりできる。

【アルコールが自然着火】

(via Daily mail)

彼は自分のことを「伝導体であり、絶縁体でもあり、蓄電体でもあり、ヒーターもである」と言う。この能力を生かして興行師として世界を周り、手から放った電気で偏頭痛や背痛などに悩む患者に治療も行っている。

後から修得したものではなく、生まれつき

【バッテリーマンの紹介動画】

彼の異常に高い耐電性は、遺伝子疾患によるものだと考えられている。彼は生まれつき汗腺も唾液腺も無い。しかも皮ふが非常に厚い。これらが彼を自然の絶縁体にしている。そのため、電流は内臓に流れることなく、分厚い皮膚上のみを伝わっていく。

5.毒を飲んでも死なない

【アルゼンチンのアタカマ砂漠】

(via Robin Fernandes)

雄牛を殺してしまうほどの毒を飲んでも、死なない人たちがいる。アタカマ砂漠のケブラダ・カマロネス地区に住む人々は、猛毒のヒ素に強い耐性を持っている。

この砂漠の住民は、ヒ素を大量に含んだ地下水しか飲むことが出来なかった。その濃度は基準値の100倍以上であり、普通なら慢性中毒を起こし、飲用が長期間に渡れば癌のリスクが非常に高くなる。

だが住民は、先祖代々受け継がれてきたAS3MT遺伝子の変異により、ヒ素をより安全な物質に代謝できるようになった。そのためヒ素が多い水を飲用しても、健康への悪影響は出ないのだ。

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雑学

Posted by uti