(水中毒)水も飲みすぎると命を落とす。水の致死量はどれくらいか?事例とともに紹介
(via Symptoms)
スポンサーリンク
どれくらいの水を飲むと人は死ぬのでしょうか?実際のところ、致死量はそれほど多くありません。16世紀に「医化学の祖」と呼ばれたパラケルススは、「全てのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが毒であるか、そうでないかを決めるのだ」という言葉を残しています。
そのことは、私達に必要不可欠な水においても当てはまります。実際の事例として75kgの人が6リットルの水を”一度に飲み”亡くなっています。
致死量については、個人個人で大きく変わります。しかし実験用のラットにおいては、半数が死亡する用量(LD50値)は90ml/kg以上とされています。これを人間に換算すれば、体重60kgの人なら5.4リットル、70kgなら6.3リットルとなります。
水中毒とは?どれくらいで中毒が起き始めるか?
水をたくさん飲むことで起こる中毒を「水中毒」と呼んでいます。この中毒は運動時や、誤った知識に基づくダイエットなどが原因で起きています。
また乳幼児の場合、体重が少ないこともあり、少量の摂取で水中毒になる可能性があります。実際に乳児が下痢などを起こした際に、スポーツドリンクを与えすぎたことで中毒になるケースも報告されています。
(via Max pixel)
水中毒の症状
(via wikimedia)
水は生命維持に欠かせないものですが、飲みすぎると血液中の塩分濃度(ナトリウム濃度)が薄まります。これがある一定以上まで薄まると、水中毒の原因となる「低ナトリウム血症」を引き起こします。
通常は水を飲んだ場合、腎臓がそれを処理して尿に変えてくれます。しかし、腎臓の処理能力を超えてしまうと、処理しきれなかった分は血液中の水分量の上昇へとつながります。
この血液中の水分が細胞へと一方的に渡って膨張することで、低ナトリウム血症となるのです。この細胞の膨張が脳細胞にまで現れだすと、致死的になります。
水中毒による初期の症状は以下となっています。
・頭痛
・意識が遠のく(意識障害)
・けん怠感
・めまい
・吐き気
・頻尿
・手足体のむくみ
中毒症状が起きる最小量としては、乳児の場合が333g/kg、男性の場合は42.86g/kgとなっています。これは体重1kgの乳児なら約0.3リットル、60kgの男性なら約2.5リットルを一度に摂取すると中毒を起こす可能性があることを意味しています。
ほとんどは上記のような症状で済みますが、急激で重度の低ナトリウム血症は、脳細胞への水分の侵入を許し、脳に水が貯まる脳腫脹(のうしゅちょう)をもたらします。これが起こるとけいれん、意識混濁、呼吸停止、脳ヘルニアなどで死に至ることがあります。
実際の水中毒の事例
事例①水飲み大会での死亡
(via ABC News)
2007年、カリフォルニアの地元ラジオ局が「WiiのためにWee(おしっこ)を我慢せよ」という大会を開きました。大会では240mlの水を15分おきに1本ずつ飲んでトイレに行くのを最後まで我慢できた人が優勝者となり、任天堂のゲーム機Wiiをもらえるというものでした。
その大会に3人の子どもの母親である、ジェニファー・ストレンジ(28歳)さんが参加しました。彼女は子どもたちがWiiを欲しがっていたことから、この大会に参加したようです。
大会中、彼女は一度もトイレに行くこと無く、およそ7.5リットルの水を3時間以上かけて飲んだとされています。結果は惜しくも優勝には届かず、2位でした。
大会終了後すぐに、彼女はひどい頭痛を訴え、数時間後に自宅で死亡しているのが発見されています。
事例②エクスタシー入りの酒を飲んだ後、6.6リットルの水を摂取し死亡
(via dailymail)
覚せい剤であるエクスタシー(MDMA)は、極度に喉の渇きや食欲増進をもたらすことで知られています。
2010年、29歳の空調エンジニアであるマシュー・エリスさんは、友達と外出してお酒を飲んでいました。その時に覚せい剤であるエクスタシーを飲んだとされています。
マシューさんは飲みから家に帰ってきて、長兄のアンドリューさんと会っています。アンドリューさんは、弟の瞳孔が開いていて、足元もふらついていたと語っています。時々酔って帰ってくることはあるけれど、こんなことは初めてだったそうです。
その後マシューさんは、兄の注意を聞くこと無く、およそ7リットルの水を飲み干したと言います。兄はさすがにおかしいと思い、病院へ連れていきましたが、そのときにはもう手遅れでした。彼は脳浮腫による脳へのダメージが原因で、命を落とすことになったのです。
MDMAの摂取によって引き起こされる水中毒の事故は、数多く報告されています。死亡するケースはまれですが、これまでに少なくとも3人以上が亡くなっています。
事例③17歳の少年が14リットルの飲料を飲み死亡
(via AJC)
2014年、17歳の高校生だったザイリス・オリバーさんが、フットボールの練習中に7リットルのゲータレードと7リットルの水を飲んで亡くなりました。彼は亡くなる以前から、運動中に水を大量に摂取する習慣があり、練習中にけいれんを起こすこともあったようです。
彼自身、そして彼以外も、このけいれんが水中毒によるものだとは考えておらず、むしろ脱水症状のために起こっていると考えていました。そのため彼はけいれんが起こると、症状が悪化するとも知らずに、さらに水分を摂取していたのです。
それが災いして、彼は水中毒で倒れる前日に、14リットルもの大量の水分をとっていました。彼は水中毒により脳浮腫を引き起こし、脳死状態と医師に宣告されることになりました。家族は医師の宣告から5日後に生命維持装置を取り外し、永遠の別れをすることになったのです。
以上、事例の紹介です。
このように、水中毒は死に至ることもある危険な中毒症状です。水中毒にならないようにするには、喉がかわいたときだけに水を飲むようにし、失った量以上の水を大量に飲まないようにすることです。また、水分を摂取する際には適度に塩分を含む飲料や食品をとるようにすることが大事です。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません