危険になりうる身近な植物10種(人・動物への毒性)
今回は、身近にある危険な植物を10種ご紹介します。
1.ジキタリス
(via Wikimedia)
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花壇などでよく植えられているヨーロッパ原産の植物です。花の形が指サックに似ているため、ラテン語の「ゆび(digitus)」が花の名前の由来となっています。
(via Wikimedia)
ジギタリスは葉や根っこ、種など全ての部位に毒性があります。死亡することはきわめてまれですが、これまでに死亡例が数件報告されています。また一部のジギタリスには、心臓に致死的な強心作用をもたらすものがあります。
このことは古くから知られており、そのため「魔女の指抜き」や「死者のベル」とおどろおどろしい名前で呼ぶ地域もあります。
ジギタリスを過剰に摂取した場合、吐き気・おう吐、下痢、めまい、視界が黄色になる黄視症、心拍数の異常などが引き起こされます。
特に中毒事故を起こしやすいのが、子どもたちです。ジギタリスを飾った花瓶の水を飲んでしまったり、外で見つけた時に口に入れてしまったりすることがあります。非常にまれではあるものの、死亡した子供もいます。
(via pixabay)
ジギタリスの過剰摂取は毒となりますが、適度の摂取なら薬として役立つことがあります。古来からジギタリスは、服用量によって脈拍を落ち着かせる効果があると知られていました。
そのためこの効果を期待して、てんかん等けいれん性の疾患の治療に使われていました。また、切り傷や打ち身に対して使用されることもあったようです。
2.フジ
(via Wikimedia)
公園や観光名所などで見かけることのある、薄紫色の花が垂れ下がったつる性植物です。
フジは種と、その種が入ったさやに毒があります。
(via nenapolaris)
ウィステリンと呼ばれる毒物で、摂取するとめまい、会話障害、吐き気、おう吐、胃痛、下痢などが引き起こされます。中毒が多いのは特に子どもとペットです。たいてい軽度から中度の胃腸炎を起こしますが、重症になるケースはまずありません。また、死亡例も報告されていません。
3.ディフェンバキア
(via Wikimedia)
葉っぱに白、黄、緑の模様が入る熱帯の植物です。メキシコやアルゼンチンなどの暖かい地域を原産としていますが、陽の光をあまり必要としないことから、世界中で観葉植物として人気になっています。
(via Wikimedia)
ディフェンバキアには、シュウ酸カルシウムの小さな結晶が多量に含まれており、この結晶の形が針状になっています。そのため、この葉っぱを噛むと、針状結晶が口内にささり、激痛をもたらします。またこの結晶自体に、有害なタンパク質分解酵素が含まれています。
激痛以外の症状として、多量のよだれや口内の炎症、水ぶくれ、喉に入ると腫れて呼吸しづらくなることもあります。しかし毒性はそれほど強いわけではなく、誤って食べて死亡したケースはありません。
ディフェンバキアで中毒になるのはペットや子どもが大半で、全体の70%は5歳以下の幼児の誤食による事故です。
4.ユリ
(via Wikimedia)
ユリは、ネコに対してきわめて強い毒性を持つ品種があります。たとえばテッポウユリ、オニユリなどは、たった1~2枚の葉で致死量になるのです。全てのユリ科植物がこのような強い毒を持つわけではありませんが、そのほとんどは中度~重度の腎臓障害を引き起こすことが知られています。
この強い毒性から、ユリの葉を乾燥させてすりつぶし、エサに混ぜこんだものが、野良猫の駆除に使われることがあります。
(via Wikimedia)
ユリは、ネコにとって全ての部分が毒となり、茎や葉、根、花粉、花瓶に入った水でさえ中毒症状をもたらします。なので、ネコがいるお家では、ユリを飾るのは避けるべきです。ネコが好奇心を持って食べたり、なめたりすることがあるからです。
症状は摂取後24~72時間以内に起こります。おう吐、食欲不振、無気力、頻尿、脱水症状が見られます。未治療なら腎不全を引き起こし、死亡することがあります。
しかし、たとえ獣医にかかったとしても、ユリ中毒に対する有効な薬はありません。ネコに胃洗浄を行って毒物を排除し、進行を抑える対症療法のみです。
ユリ以外にも似たような中毒症状を示す花があり、キスゲ、イースターリリー、カサブランカなどもネコにとって有害です。
5.スイセン
(via Wikimedia)
全てのスイセンの花には、リコリンと呼ばれる毒物が含まれています。全ての部位に毒がありますが、球根部分(鱗茎)に一番毒が多いです。
毒性はそれほど強くないとされていますが、これまでにアサツキとスイセンの鱗茎を間違えて食べ、亡くなった方がいます。また古来からこの毒性を利用して自殺薬として利用する人もいました。
(via Scottish Rock Garden Club)
初期症状としては、急激な腹痛、吐き気、おう吐が見られます。ひどくなると体の震えやけいれん、マヒなどを起こし、死に至ります。
またニラと間違えて食べ、中毒になるケースも報告されています。しかしニラとは大きな違いが2つあります。一つに、ニラには葉に独特な匂いがありますが、スイセンにはありません。二つに、ニラはひげ根で鱗茎(球根)がありません。
(via Wikimedia)
庭師や花屋でスイセンの花をさわる機会がある人は、皮ふ炎を起こすことが多いようです。手の皮ふが乾燥して亀裂が入り、水ぶくれになる等の症状が見られます。これは葉や茎からからしみ出る、有害なシュウ酸カルシウムやゲリドン酸、リコリンなどが影響していると考えられます。
過剰摂取は命取りとなるスイセンですが、この花から抽出したガランタミンは軽~中度のアルツハイマー病(記憶や思考能力が失われる障害)の治療に使われています。アメリカでもアルツハイマー治療薬として正式に認可されています。
また紀元前からスイセンは、特にガンなどの様々な病気に効くとして、数千年に渡って利用されていました。古代ギリシャの医者、ヒポクラテス(紀元前460~370年)も、スイセンから抽出した油は、子宮ガンに効果があると書いています。
6.アジサイ
(via Wikimedia)
アジサイには、ごく微量ながらすべての部位に毒が含まれています。実際に2008年6月、料理の飾り付けに使われたアジサイの葉を食べた人が中毒を起こしています。症状は下痢やおう吐、心拍数の増加などです。この中毒症状はウシやヤギなど、他の動物でも見られます。
(via Pixabay)
この毒性を利用して、葉を乾燥させて吸い、気分をハイにする人もいます。アジサイの毒には、大麻と似た症状を示す成分を含むことが分かっています。
7.キョウチクトウ
(via Leonora (Ellie) Enking)
(via wikimedia)
美しい花を咲かせ、厳しい環境にも耐性があることから園芸植物として人気の種ですが、非常に強い毒があります。その毒は特に、動物に対して害を与えます。
乾燥させた葉は、馬1頭の致死量が100gとされています。そしてウシの場合では、たった数gの摂取で死亡したケースもあります。人間に対しては、それほど強力に作用しないものの、死亡者が少なからず出ています。
アメリカでは2002年だけで、847人のキョウチクトウ中毒者が出ました。しかし死亡者数は1985~2005年の間で3人となっており、比較的少なくなっています。
中毒の原因は、キョウチクトウに含まれる強心配糖体が原因とされています。先に紹介したジギタリスと同様に心臓毒であり、心臓の運動機能を停止させる作用があります。
症状としては、初期におう吐、手足の脱力、けん怠感、下痢、めまい、腹痛などが見られ、悪化すると心臓マヒで死にいたります。
(via Pixabay)
キョウチクトウが恐れられているのは、強い毒を持つうえに、それがあらゆる部位に存在することです。花、葉、根、枝、果実など全ての部位に毒性を示し、キョウチクトウが生えている周辺の土壌にまで毒を広げます。
生木を焼いた煙にも毒性があり、枝を箸として使ったことで中毒を起こしたケースもあります。またBBQの串代わりにこの枝を使って、死亡事故が発生しています。
8.ツツジ系(アザレアやレンゲツツジなど)
(via wikimedia)
(via wikimedia)
日本中で見ることのできるツツジですが、その多くの種にグラヤノトキシンと呼ばれる強い毒が含まれています。全草が毒であり、蜜や花粉などにも毒が含まれています。
特にレンゲツツジは毒性が強く、症状としてけいれんやおう吐を引き起こし、最悪の場合、呼吸停止にいたることもあります。
またツツジの蜜をミツバチが集めて作った「ハチミツ」も毒性があり、これを食べて中毒を起こした報告もあがっています。
さらにツツジ系は、馬に対してきわめて強い毒性を発揮することで知られ、摂取後数時間で死亡したケースが報告されています。
9.ドクゼリ
(via wikimedia)
(via Tropical/wikimedia)
ドクゼリは、春の七草であるセリと似ていることから、よく間違われ、中毒を起こす人が続出しています。海外ではニンジンとよく似たパースニップと間違えられて、中毒が起きています。
生育場所もほぼ同じで、花・葉の形もよく似ていますが、大きな違いが二つあります。一つ目に、ドクゼリには根の方に、タケノコのような節があります。セリにはありません。
(via rolv)
二つ目の大きな違いは、その匂いです。セリは非常に独特で個性的な匂いを発しますが、ドクゼリにはそれがありません。
ドクゼリにはシクトキシンという中枢神経の働きを阻害する毒物が含まれています。人が摂取した場合、60分以内にけいれんや呼吸困難、おう吐、めまい、腹痛などの症状が現れます。致死量は50mg/kgで、60kgの人なら3g以上で死亡する可能性があります。
この毒は動物に対しても害を与え、ヒツジは致死量1g/kgで、馬の場合では約230gが致死量とされています。
10.イチイ
(via wikimedia)
イチイ、あるいはオンコとも呼ばれるこの木には、果肉を除く全ての部位に毒があります。赤い果肉の部分は食べられますが、果肉の中にある種は、イチイの中で最も毒が強い部位です。
死亡例もあり、最近では2014年にイングランドの男性が、ガーデニング中にイチイを食べて亡くなっています。
また犬などの動物に対しても極めて強い毒性を持つことが知られています。犬の致死量は、葉なら2.3g/kgで、3kg前後の小型犬ならたった7gで死ぬ可能性があります。そのため、この枝を使って犬と遊んだだけでも、中毒を起こすことがあるのです。
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