古代エジプトで行われていた手術(治療)の雑学
紀元前3000年頃に始まった地球上で最初の偉大な文明である古代エジプトは、当時としては医療の最先端にあった。古代エジプト人は試行錯誤を経て、様々な病気の治療法を発見しており、それらの多くは現代でも用いられている。ここでは、実際に古代エジプトの医療はどのようなものだったのかご紹介していこう。
1.男性の割礼の習慣が最初に始まったのは、古代エジプト
(via wikipedia)
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男性性器の包皮を切除する行為(割礼)は、古代エジプト人が最初に始めたとされている。割礼の最も古い記録は、紀元前2300年頃のエジプト第6王朝にさかのぼり、その頃の墳墓の壁画に割礼のシーンが描かれている。
エジプト人は、この割礼の知識を他の国へと広めた。古代ギリシアの歴史家であるヘロドトスは、紀元前5世紀頃に「彼らは割礼をする唯一の民族である」と書き記している。またその慣習の目的を「清潔さのためであり、彼らは見栄えより清潔であるほうが良いと考えていた」としている。
古代エジプト人は、現代のように出生直後ではなく思春期に入る前に割礼を行っていた。そのため割礼は、大人になるための通過儀礼だったとも言われている。
残念ながら、当時は麻酔の技術が存在していなかったため、割礼を受ける少年は非常に強い忍耐力を必要とした。
2.歯の施術はあまり効果がなく、痛かった
(via wikimedia)
一般的な古代エジプト人の食事は、歯の健康を助けるものではなかった。穀物をすりつぶす過程で砂や小石が入るため、それらが歯をすり減らし、若くして歯を失った人が多かったとされる。実際に第18王朝ファラオの妻であったネフェルティティは、40代ですべての歯を失っていた。
歯の治療は様々な方法で行われていたが、ほとんど効果がなかった。たとえば古代エジプト医学書のエーベルス・パピルスに書かれていたのは、タマネギとクミン、香料を混ぜ合わせた粉を歯に塗ると歯痛に効くというものだった。
(via reddit)
また当時は麻酔が無かったにもかかわらず、下顎骨に穴を開けて歯根の膿を除去する治療が行われており、激しい苦痛をともなうものだった。
3.女性医師が手術を行ったのは、古代エジプトが有史以来初めて
(via BBVA)
古代エジプトが他の文明より先進的であったのは科学技術だけでなく、男女平等においてもだった。紀元前2700年頃の女性医師メリト・プタハは、科学分野の歴史に登場する最初の女性として知られている。しかも彼女は医長として、男性医師の監督を行う立場だった。また当時の君主と個人的に対面する機会もあったという。
4.古代エジプト人が、世界初の義肢を作った可能性が高い
(via wikimedia)
エジプトのルクソールで、祭司の娘のミイラが発見されており、その足には木と革で出来た人工の指が装着されていた。このミイラが亡くなったのは紀元前950~710年と推定されており、現在のところ世界最古の義肢と考えられている。
これは欠損部位をおぎなうための単なる装飾ではなく、体重をかけて移動できるように設計されている機能的な義指であった。
5.古代エジプト人は、現代でも用いられる手術器具と類似したものを使っていた
(via wikimedia)
今日ほどの洗練された手術器具ではないが、古代エジプトでは現代の医療施設でも見られるメスやピンサー(ピンセット)、フォーセップ(物をつかむ・おさえる用)、ソー(のこぎり)、フック(組織の剥離用)に類似する道具が用いられていた。それらは主に彼らがこの時代に発見した銅で出来ていた。
6.主要な臓器の役割を、ある程度理解していた
(via wikimedia)
古代エジプトでは、皮ふに深い傷をつける手術はめったに行われなかったが、医師らは臓器に関する基礎知識をある程度持っていた。古代エジプトの医学書エーベルス・パピルスには、各々の臓器の働きが説明されており、その内容は少し的を外したものもあるが、見事に言い当てているものもあった。
7.死体解剖は普通に行われていたが、それから得られる知見が医療に生かされることはほとんど無かった
(via Wikimedia )
古代エジプト人は洗練されたミイラ化技術を有していた。遺体をミイラにするため、遺体の皮ふを切開して内臓を取り除き、鼻から挿入したカギ状の器具で脳をかきだした後、乾燥させていた。
しかしミイラ化する際の解剖で得られた知見は、いかなる医療行為にも用いられることはなかった。それはミイラ化が宗教的な行いであり、聖職者が遺体の加工処理をしていたためだ。
当時、聖職者と医師の間でコミュニケーションは行われておらず、解剖の知見が共有されることはなかったのだ。
8.紀元前3000年ごろには、既に手術が行われていた
(via maxpixel)
紀元前3000年ごろから長期間にわたる試行錯誤を経て、戦傷やヘビによる咬傷、サソリによる中毒など様々な治療が始まっていたことが分かっている。また紀元前2700年には、高級神官イムホテプが手術に関する盟約を記していた。
古代エジプトの医療技術は、同時期の文明に比べて進んでいたが、その当時のエジプト人の平均寿命はおよそ34歳と見積もられており、現在と比べ物にならないほど低かった。
9.ケガの治療に、科学と魔法の両方が用いられた
(via wikimedia)
古代エジプト人は科学的に正しい治療を数多く行っていたものの、治療法の第一は魔法であった。彼らは、病気が悪霊などの超自然的な存在によって引き起こされると考えていた。それゆえ治療行為は、呪術を行うことがメインだった。
その一つの例として百日咳の治療法があげられる。それはすりつぶしたネズミをミルクに混ぜて飲ませた後、まじないを唱えて悪魔を追い払うものだった。
10.傷口の縫合や骨折の手当てに熟達していた
(via k–y.top)
皮ふを深く切開して行う侵襲的手術は、麻酔も消毒剤もなかった時代にはかなりの困難があった。患者は手術で耐え難い痛みをともない、感染症を起こして亡くなることも珍しくなかった。だが局所療法には、かなり熟達していた。
彼らは添え木と亜麻布を用いて骨折の手当を行ったり、脱臼を正しい位置に直す方法など実用的な知識を持っていた。また傷口の縫合や火傷を癒やすのに効果的な薬草の軟こうを知っていた。
参照:ranker
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