脳がほとんど無かった奇跡の人たち
脳の大部分が損傷しながらも、奇跡的に生き延びた人たちをご紹介していこう。
1.健康な脳組織が2%しかなかった少年
(via dailymail)
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脳のほとんどが損傷した状態で産まれた少年ノア・ウォール君は、医者でさえ驚くようなほぼ完璧な回復を見せた。
母親は妊娠3ヶ月のときに、主治医から「ノアは脊椎分裂症と水頭症で死産になる可能性が高い」と伝えられていた。主治医は中絶をすすめたが、ノアの両親は一縷の望みをかけて出産を決意した。
(via wikimedia)
ノアは脊椎の形成不全により、脳脊髄液の循環がさまたげられ、頭がい骨内にその液体がたまる重度の水頭症を起こしており、その液体の圧力で脳の容積は極端に減少していた。
(via SWNS)
両親は医師からノアの産声を聞けないかもしれないと言われていた。しかし出産後、両親はノアの大きな泣き声を聞き、息遣いを感じることができたのだ。
ノアは脳内の圧力を減少させる緊急的な治療を受けた後、10日で病院を退院し、自宅に帰ることが許可された。
(via Cater news agency)
ノアが生き延びたことだけでも驚きだったが、両親はノアの脳のスキャン画像を見てさらにショックを受けることになった。ノアの脳の容積は本来の2%だけしかなかったのである。それにも関わらず、脳幹が損なわれていなかったおかげで、ノアは食べることも飲むことも呼吸もできた。
(via Cater news agency)
そして3歳になり、2度目の脳スキャンを受けた。このときにも信じられない奇跡が起きていた。ノアの脳は、通常の脳の約80%まで育っていたのだ。
(via chroniclelive)
医師でさえこの奇跡的な現象について完全な説明は難しいと話している。おそらく頭蓋骨内に溜まった液体の除去治療が功を奏し、脳にかかる圧力が緩和されたことで、元のサイズまで戻るように回復したのではないかと言う。
(via cbc)
2019年3月に、ノアは7歳になった。両親と姉のステフに可愛がられながら、自宅教育を受けている。脳により多くの刺激を与えるため、算数や読書などの脳トレーニングに多くの時間を使っているそうだ。その努力のかいがあって、自分の名前を書いたり、文章を読んだり、ゲームをしたりできるようになった。
ノアは知的な発達だけでなく、感情的な知性も急激に発達し続けている。ノアはどんな年齢の人とでも会話をして、大勢の人の前でも堂々と話せるし、ときにはジョークを放ち、みんなを笑わせる。
(via bbc)
現在ノアは胸部から下のマヒが残っているため、車いす生活を送っているが、数年のうちに歩行できるかもしれないという。そのために脚や体のコア部分の筋肉をつける特別なトレーニングを行っている。最初は下半身をほとんど動かせない状態だったが、今では片足を上げたり、集中すれば足の親指を動かせるようになった。
2.脳の90%が損傷していたにも関わらず、普通の生活を送っていた男性
これは、2007年に医学雑誌ランセットで報告されていたイタリア人男性のケースである。この44歳の男性患者は、左足の脱力感のため病院を受診した。MRIスキャンを行ったところ、頭がい骨に液体がたまり脳が侵食され、ごくわずかな外層しか脳組織が残っていなかった。
(via lancet)
彼の主治医はこの患者の症状について、30年かけて徐々に頭蓋骨内に液体がたまり、脳が破壊されていったと考えている。
男性患者は、幼児のときに水頭症と診断され、ステントチューブで治療を受けていた。だがそのステントを14歳のときに取り除いた。おそらくそれが原因で、水頭症が進行し、彼の脳が侵食されていったようである。
これほどの損傷を受けていたにもかかわらず、彼は普通の公務員として働き、健康な生活を送っていた。そして結婚をし、二人の子供もいた。ただしIQは75と低かったが、健常者の範囲にあった。
この患者のケースによって、科学者は人の意識について再考させられることになった。これまで人の意識は、視覚野など脳の特定の部位が担うと思われていた。だがこの仮説が正しいとすれば、この患者が意識を保ち、正常な行動ができるはずはなかった。
これらのことから、このケースを論文で報告した医者は、脳の決まった部位が意識を司っている可能性は低いと話している。そして意識は生まれつきではなく、脳が何度も学習することで習得されると言う。このため大部分の脳が損傷しても、異なる脳領域が学習して、意識がある部位を柔軟に変えることができたとしている。
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コメント一覧
気軽に脳の検査が出来る世の中になればいいな
すごい!